相続は多額のお金が動く手続きのため、相続人全員が納得できるよう慎重に遺産分割を行う必要があります。
遺産分割協議は相続人全員参加のうえで行わなければなりませんが、何らかの事情でタイミングが合わない、協議への参加に応じてくれない相続人がいるなど、さまざまな理由で難航してしまうケースも少なくありません。
遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合は、遺産分割調停の利用によって解決を目指す方法があります。
遺産分割調停の利用には、相続人による家庭裁判所への申し立てが必要です。申立てを行うと、裁判所によって選任された弁護士等が調停委員となり、遺産分割の仲介に入ってくれます。
遺産分割調停が利用されるケース
調停の利用を検討する必要があるのは以下のようなケースです。
- 相続人同士の意見が対立し、遺産分割協議がまとまらない
- 遺産分割協議への参加を拒否する相続人がいる
- もともと相続人同士の仲が悪く、円滑な協議が望めない
遺産分割調停のメリット、デメリット
遺産分割調停には以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。
遺産分割調停のメリット
- 冷静に話し合える
遺産分割ではそれぞれの認識の齟齬や感情の対立でトラブル発展することが多くあります。調停では調停委員を介して話し合いを進めるため、当事者同士は直接顔を合わせることはありません。そのためお互いに相手の立場を理解しながら、冷静に話し合うことができると考えられます。 - 公平な解決が目指せる
調停では調停委員が公正かつ中立的な立場から、解決策を提案し、それぞれの相続人が納得する方向に調整してくれます。法律的にも公平で円満な解決に向かうことができます。
遺産分割調停のデメリット
- 時間がかかる
調停が開かれるペースは1か月に1回程度で、一般的には結果がまとまるまでに最低でも4~5回程度調停が行われるため、最終的に1年から長い場合は2年ほどの時間を要します。 - 自分の主張をすべて通すのは困難
調停とは裁判官や調停委員が、当事者全員の意見を聞いたうえで全員の納得のいく解決を図る手続きです。必ずしも自分の主張がすべて通るとは限りません。
遺産分割調停が不成立の場合
調停によっても解決できず、調停が不成立となる場合もあります。
その時は「遺産分割審判」の手続きが自動的に開始され、裁判官によって審判がなされます。
遺産分割は調停前置主義をとっているので、裁判や訴訟の前に、調停を経なければなりません。それゆえ、初めから審判を求めることはできず、原則として調停ののちに審判へと進む流れになります。